プロになりきれない主婦う〜さんが綴る、日々のあれこれ。

2015年3月5日木曜日

 通勤路に、河口付近の橋がある。川は東に向かって流れ太平洋に注ぎ、近辺には貨物の積み出し港や、漁港、そして海水浴場がある。
 仕事帰りに、その橋で月に出くわすことがある。夕方6時前後に通るので、大抵満月辺り。日の短い冬場は真っ暗な中に煌々として浮かび、海と川に月の道を作っていた。3月に入ると急激に日が延び、今はペールブルーの空に、薄淡い金糸で作ったぼんぼりのように、儚げに浮かぶ。

 冬の豪華絢爛、華やかな月も良いが、より心惹かれるのは、薄ぼんやりとした月。少し欠けた月が、ドライアイスのような雲の向こうでたたずむ姿は、冷たいほどに清楚なのに、光の裳裾から何とも言えぬ艶やかさがこぼれるし、春霞に包まれた姿はほんの少し寂しげなのに、閉ざされた闇を無心に照らす。
 40年近く空を見上げてきて、最後に残るのは、やはり月。四季それぞれに、刻それぞれに、仰ぎ見る者の齢それぞれに、数限りない顔を見せる月。それとて、永遠にこちら側だけ。

 松林を過ぎて、飛び込んでくるその姿。海の上から、海面高く喫水線の見える貨物船の上、建ち並ぶ倉庫の上、電柱と電線の陰を細く見せ、世界を支配しそうなくらいに大きな月が、フロントガラスの枠を忘れさせる。
 ・・・あぁ、でも、ハンドルを握っているのを忘れてはいけない・・・。

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